パーパス

企業内アクティビストの時代は来るか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

先日ある事件をきっかけにネットで、鉄道の乗車拒否をめぐる議論が巻き起こっていた。
すでにかなり有名なので詳細は差し控えるが、車いすの方が家族旅行で、とある無人駅までの切符を購入しようとしたところ、事前の予約なしでは準備が間に合わないので別の無人ではない駅までの利用を勧められたことが発端らしい。

個人的には、あえて予約なしで無人駅を使うという選択をすることにより、鉄道会社の対応を改善していくという行動には意味があると思う。
それが不当なものでなければ、要求していくことで世の中の当たり前を少しずつ変えていくことができるだろうし、現在わたしたちが受け取っている社会インフラも、多くはそういう行動の積み重ねで改善してきたのだと思うから。

と、まあそれは置いておいて、この話を聞いていてわたしがふと思ったのは、自分がこの鉄道会社側だったらどうするかな、ということだった。

「社会課題を解決する」というお題目を恥ずかしげもなく掲げているくらいなのだから、そういう場に出くわしたら出来る限り当事者の側に立つべきである。
とはいえ、いち会社員という立場であり、即決即断で会社の対応を左右するようなソフトバンクの孫さんレベルの権力は、わたしにはない。
では何が出来るのか。もしかしたら、すぐには何もできず、せいぜい後から改善提案をするくらいしかできないかもしれない。

アクティビストという言葉がある。
企業に対して積極的に関与していく人たちの総称として使われていて、たとえばある程度の株を保有して経営に口を出す「物言う株主」と呼ばれるような人たちも含まれるし、環境保護や動物愛護といった特定のイシューに関する企業の対応を引き出すため、環境を破壊している企業の実名入りレポートを発行したり、時に企業の前でデモを行ったりするNGOなどもアクティビストと呼ばれることが多い。
「物言う株主」に関してはよくわからないが、少なくとも大半の国際的NGOに関しては、基本的に信条を持って特定のパーパスのために行動しており、企業への要求は特に厳しいものの、持続可能な社会のためには仕方ないというレベルのモノであることが多い。

そしていま世界で注目されているのが、企業内アクティビストと呼ばれる存在だ。
通販業界で最大手のアマゾンが2019年に「Climeta Pledge」という既往変動対策方針を発表したが、このきっかけになったのが気候変動対策を求める従業員のストライキだったと言われている。
企業に所属しながら、その企業に対し環境や社会への具体的な行動を求める。社会課題版の労働組合のような存在といえるだろうか。


「Climeta Pledge」は2040年までにカーボンゼロを目指すなど野心的でかなりの投資が必要なアクションだったが、ここまでのレベルでなくても、たとえばジェンダーレスなトイレの設置を求める、あるいは冒頭の例のように、自社にもっとインクルーシブな対応を求めるような活動を従業員が主導して企業を動かすことは、もっと増えていくべきなのだろう。

滅私奉公と揶揄されがちな日本型雇用にはなじまない文化かもしれないが、本来はNGOが大義に忠実に動いているように、時には自社のビジョンに強く共感しているからこそ、その企業を変えることも辞さない、と言うアクションがあってもよいと思う。
Z世代は上の世代と比較して大義を求めると言われており、企業側もそれに対応するように自社のパーパスを打ち出した採用を始めているが、従業員が企業内でアクティビストになったとしても真摯に対話できるか。

これから、そういうことが問われる時代になるだろう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*

CAPTCHA