出世しないおじさんのための社会課題解決

出世しないおじさんのための社会課題解決 その②「WHO (For Whom)」編 誰のために力を尽くすのか

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社会課題には必ず困っている人、つまり当事者が存在する。
SDGsの「その1 貧困をなくそう」なら、まさに貧困の渦中にある人たちが当事者ということになる。
ちなみに目標にぶら下がっている169のターゲットではさらにその定義が明確になっていて、最も優先順位が高いのは「1日1.25ドル未満で生活する人々」である。
それだけではなく、「あらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる」ともあるので、いわゆる相対的貧困と呼ばれるような状態にある人たちも、もちろん当事者ということになるだろう。

前回は社会課題に挑む「WHY」つまり「なぜそれをやるのか?」についてだったが、次に考えるべきは「WHO (For Whom)」つまり「誰のために」やるのか? だ。
この部分は「WHY」と同じく、あなたにしかない理由、誰のために力を尽くしたいのかという想いが必要になる。
当事者と書いたが、人ではないかもしれない。たとえば最近はレジ袋の有料化やプラスチックストローの廃止など、脱プラスチックに向けた動きが盛んになっている。
この場合の社会課題はおもに「海洋プラスチック問題」として知られている。海に流出したプラスチックは数百年分解されず漂い続けてしまうという環境問題だが、ここで主に当事者とされるのは「海の生物」だったりする。

フィリピンの砂浜に打ち上げられた「クジラ」の悲痛なメッセージ
引用元:https://tabi-labo.com/281820/deadwhale-project

上の画像は環境系NGOのグリーンピースが海洋プラスチック問題を訴えるために作ったクジラのオブジェだ。
クジラの口からあふれ出た大量のプラスチックごみは、海に漂うプラスチックが動物たちの安全を脅かしていることを表現している。※1
WWFやグリーンピースなどの環境系NGOは、このように人間の身勝手な行為により蹂躙される動物や自然の側に立って活動し、人々に改善のための行動を訴えている。

もしあなたが動物や自然をこよなく愛する人であるならば、彼ら、彼女らを守るための活動を始めてみるのもいいと思う。
海以外にも、捨てられれしまったペットの問題や、畜産における飼育環境問題、野生動物保護など、たくさんの取り組みがある。

「誰のために」を考えるときに最も重要なのは、あなたの思いがどこから来ているのかということを、できるだけ客観的にとらえることだろう。
おそらくそれは、過去の自分自身や、深い関係のあった人々に関係しているのではないだろうか。
例えば私は、決して裕福とは言えない母子家庭で育った。母親は夜遅くまで働くこともあり、寂しい思いをしたこともある。
昔は父の日に授業で父親の絵を描かされたり、父親参観日なんてものもあった。そのたび悲しい思いをした。
家もあばら家のような造りで、友達を呼ぶのが恥ずかしかった・・・・・・。
そんな経験から、年齢を重ねてから、ふと、同じような環境の子供たちのために何かできないかということを考えることが多くなっていった。
大人になってしまうと、周りとの違いは見えにくくなる。自分の周りには同じような生活水準の人間しかいなくなるし、本音を出し合うようなことも少なくなる。

だけどそれでも、折に触れて違いを意識することがある。同じように見えても、育った環境が違えば感じ方も違う。
昔話をするときに、分かり合えない部分が見えてくることもある。自分と同じ悩みを抱えていた人でないと、この悩みは理解できないのかもしれない、そう感じることがあるかもしれない。
同様に、すごく動物が好きだったり、自然を愛していたり、人はそれぞれ譲れないもの、自分を構成する根幹、ルーツを持っている。
苦しむ当事者を見て、みんなが同じようにやり切れない思いを抱えるわけではないことに思い至る。
社会に出てそれなりの経験を経て、ある意味会社人としてはあがりが見えてきた。でも人生は生きている限り続く、良くも悪くも。
それなら、残りの人生を、自分と同じ思いを抱える当事者たちのために使ってみてはどうだろう、仕事をつづけながらでもできることはたくさんある。前回も書いたようにむしろ、
本業をつづけながらのほうが、相互に良い影響を及ぼす可能性がある。

これはある意味、自分の人生と折り合いをつける旅なのかもしれない。理解されない苦しみを嫉妬や怒りのような負の感情に変える前に、過去の自分を抱きしめよう。
人のためではなく、自分のためにやる、それがPolar star & Stanceの考える社会課題解決だ。

「誰のために」は明確になっただろうか?
まずは走りながら考えてもいい。大事なことは一歩目を踏み出すことだ。
この「Polar star & Stance」では、「マーケティング(スキル)で社会課題解決をする」ことを目指している。


それはなぜか、ここで簡単に説明しておきたい。
「マーケティング」には様々な定義があるが、基本的には「市場を創造する」ことだ。世の中にまだないもの、あるいはまだ価値が十分認められていないものに光を当て、顧客となりうる人たちに価値をつたえ、悩みを解消したり、生活に潤いを供給して、共感を広げる。その結果が「市場を創造する」ことになる。


このマーケティングの一連のプロセス、考え方、スキルセットは、これからの社会課題解決に欠かせないものだ。
シンプルに考えれば、「社会課題」が「課題」のまま残っているのは、多くの場合市場原理がうまく働いていない、もしくは逆に市場原理が問題を生み出していることにある。

市場原理が働いていない代表例は貧困問題だ。当然のことだが貧困層には経済力がないのだから、そこにはなかなか市場ができず、そのため企業も参入せず、取り残されてしまう。
逆に問題を生み出している代表例は環境問題だ。地球温暖化は過剰な生産・消費行動が生み出すCO2などの温暖化ガス(GHG:greenhouse gas)が原因だ。
そのほかにも公害などは経済活動の負の側面と言えるだろう。

市場原理が働いていないと、社会課題解決というものは多くの場合善意の世界、つまり募金や社会保障、献身的なボランティアによってだけ支えられることになりがちだ。
NPO,NGOに代表されるソーシャルセクターが主にその担い手となっており、その大義には敬意を払い続けるべきだが、しかしいずれにせよ、善意だけに頼っていては限界がある。
これは多くのソーシャルセクター関係者も認めるところだろう。

「市場原理が働いていないところに、適切に市場原理を持ち込み、環境問題を引き起こしたり、経済格差を増大させないよう、適切に運用する」
これが現代の社会課題解決の基本的な処方箋になる。そのためには市場を創り、適切に運用するマーケティング戦略・戦術が欠かせない。

あくまでひとつのやり方として、企業をうまく巻き込み、その企業のブランドや製品に共感する人たちと一緒になって当事者を支援し続ける仕組みを作るようなやり方も考えられる。
例えば貧困地域の人たちが作る農作物や衣類などを適切な価格で市場に送り出す、フェアトレード的なマーケティングや、製品やブランドから寄付を行う、いわゆるコーズリレイテッドマーケティングなど、
マーケティングの考え方は応用次第で持続可能な社会課題解決の仕組みを作り出すことができる。


もちろん、今のマーケティングの考え方には、あまりに市場原理に特化しすぎている側面もある、つまり負の部分も大きいので、良い部分だけを見極め、課題解決に応用する努力が必要だ。
そのあたりは今後「WHAT(何を)」「HOW(どうやって)」でおいおい考えていくことにしたい。

※1 海洋プラスチック問題に関してだけでなく、個人的には常に冷静で価格的なエビデンス、例えば本当にプラスチックは海の生物の主要な死因なのか(影響度や、排泄などのプロセスの確認)や有害物質の吸着度合い、環境、人体の影響度などを明確にしておくことは重要だと思っている。感覚ではなく科学で判断しないと、人は簡単に問題を見誤るので・・・・・。

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